協働ロボットの定期メンテナンスでは、本体や周辺機器といったハード面の保守管理だけでなく、システムやプログラムといったソフト面の保守管理も必要であり、それぞれにおいて適切なアップデートや維持管理を考えることが大切です。
協働ロボットのシステムは適切なプログラムを前提として適切に稼働します。一方、ソフトウェアは販売時点で100%完璧な状態になっているわけでなく、その後に思いがけないバグや脆弱性といった課題が見つかることもあります。
そのため、ソフトウェアは定期的なアップデートによって常に最新の状態を維持することが重要です。またソフトウェアのアップデートはセキュリティ面の改善だけでなく、他のシステムとの連携や新機能の追加といった機能面での改善も期待できます。
協働ロボットではソフト面でのアップデートのみならず、本体のパーツや周辺機器といったハード面のアップグレードも大切です。
例えば素材や性能が刷新された新パーツが開発されたり、新型周辺機器の販売によって現在よりも協働ロボットの生産性や機能性を強化できたりと、多角的なアップグレードの可能性が考えられます。
また追加パーツを組み込んだり、カスタマイズしたりすることで、一層に自社のニーズへマッチさせられることもあるでしょう。
アップデートの頻度は協働ロボットの機種やメーカー、生産現場の環境などによって異なります。またソフトウェアのアップデート頻度と、ハードウェアのアップグレード頻度に差が生じることも自然です。
アップデートのタイミングとしては定期メンテナンスの他、メーカーやベンダーからソフトの更新情報が通知された時、またトラブルやエラーが発覚した時など状況に合わせて対応することが必要となります。
アップデートを適切に実施した場合、従来の性能よりも優れた状態に協働ロボットやシステムを改善することが可能です。
それにより新しい機能を獲得できたり、生産効率を高めて省力化や省人化を進めたりと、色々なメリットを得られる可能性も広がります。
システムの脆弱性が発見された場合、適切なアップデートを行うことで安全性を高めることが必要です。また各種センサーや制御システムとの連携を強化することで、作業員に対する安全性や労務環境の健全性を向上できることもあるでしょう。
またISO規格といった国際認証へ準拠した環境に適合できる場合もあります。
新しく協働ロボットを買い直さなくても、既存設備のアップデートによって機能向上を実現できれば、導入コストを大幅に削減することが可能です。また、追加機器や新パーツを組み込むことで、中小零細企業のようなユーザーでも費用を抑えつつ生産性を高められるかも知れません。
協働ロボットの機能性や拡張性をアップデートで追求できた場合、FA化やデジタル化によって24時間の稼働が可能になったり、必要な作業員の人数を抑えて人件費を削減したりといった期待もあります。
また多言語化プログラムを活用することで、外国人労働者の起用が容易になり、人手不足解消に役立つ可能性もあるでしょう。その他、危険作業の自動化によって労災リスクの低減にもつながります。
アップデートによってエネルギー効率が向上し、消費電力量を抑えられた場合、エネルギーコストを低減できる上、環境負荷軽減にも役立ちます。これにより企業の責任として持続可能な社会へ貢献できることは重要です。
2025年2月4日にURロボットからソフトウェアのバージョンアップ「PolyScope 5.21」がリリースされました。本アップデートにはロボット動作の安定性の向上や操作性の改善といった更新プログラムが含まれ、新しいモーションを追加することもできます。
参照元:iCOM技研ブログ|URロボット最新OSの「PolyScope 5.21」について解説~OPTI MOVE~(https://www.icom-giken.com/blog/ur_polyscope5-21_optimove/)
ファナックでは協働ロボットの「CR、CRXシリーズ」に関して、高可搬タイプを新たに提供することで製品ラインのアップデートを行いました。これにより従来の可搬質量35kgから50kgまで強化することができました。
参照元:FANUC公式HP|協働ロボット高可搬対応(https://www.fanuc.co.jp/ja/product/new_product/2023/202306_robotapplication_highmovable.html)
2025年2月に、安全要件に関連する国際規格「ISO 10218シリーズ」が更新されており、これにより各メーカーにおいても新規格へ適合させるため、ロボットの安全性に関する要件の見直しやアップデートが必要だとされています。
参照元:PR TIMES|テュフズードからのお知らせ: ISO 10218-1:2025、 ISO 10218-2:2025がリリースされました(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000202.000017062.html)
定期的にメーカーの公式情報やサポート情報をチェックして、適切なタイミングで更新・アップデートを実施できるよう注意してください。またその際は必ず互換性を確認することも必要です。
アップデートを行った後は、システムが正常に稼働することを動作チェックや安全性テストによって確かめます。また新機能が追加される場合は作業員の研修も行います。
アップデートによって協働ロボットの性能や生産効率が変化した場合、改めて生産スケジュールや運用計画を見直しましょう。
また、繁忙期はアップデートを避けるといったタイミングの見極めも大切です。
協働ロボットの導入によって様々な恩恵やメリットを期待できる一方、適切な保守管理やメンテナンスが行われなければその性能を適切に発揮することができず、逆にセキュリティリスクや労災リスクといった危険が増大することもあります。
協働ロボットの保守管理にはソフト面やハード面のアップデートも含まれており、メーカーの公式情報もチェックしながら自社のニーズや事業計画を踏まえてアップデートの実施を検討していきましょう。