人間と同じ空間で稼働させることができる協働ロボットを導入するには、安全対策が欠かせません。このページでは、協働ロボットの導入時に求められる安全規格についてご紹介します。
協働ロボットを安全に使用するには、協働ロボットを含む産業用ロボットの安全対策に関わる法令と規格を遵守することが重要なポイントです。それらの法令と規格には、ロボットを安全に使用するための規定や仕様が定められています。具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
協働ロボットの使用における安全を確保するための法令と規格には、以下の4つがあります。
労働安全衛生規則は、労働の安全衛生に関する基準を定めた厚生労働省の省令です。この中の「労働安全衛生規則第150条の4」では、産業用ロボットを使用する際の危険防止について規定しています。
ISO10218-1、ISO10218-2、ISO/TS15066は、製品やサービスの標準化を目的とする非営利団体、「国際標準化機構(ISO)」によるロボットシステムに関する安全要求事項を定めた安全規格です。
この内、協働ロボットの効果的な運用に関して注目すべきなのは、労働安全衛生規則です。
産業用ロボットの危険防止を規定した労働安全衛生規則の中の「労働安全衛生規則第150条の4」は、かつて、定格出力80W以上のロボットを稼働させる場合は、安全柵や囲いを設けて、ロボットと作業者を物理的に隔離しなければならない旨を規定していました。
近年、この規制は緩和され、安全性を保つための一定の条件を満たす場合は、80W以上のロボットでも安全柵を設けずに作業者と協働することが可能になりました。この規制緩和により、協働ロボットを有効活用できる幅が広がったのです。
80W規制は緩和されても、協働ロボットの安全対策が不要になるわけではありません。むしろ、ロボットを有効活用しつつ安全を確保するために、いくつかの要求機能や規格が定められています。ISO(国際標準化機構)では、以下の4つの要求機能を定めています。
安全適合の監視・停止機能では、ロボットの監視・停止に関する条件を定めています。ポイントは下記の3点です。
ハンドガイドとは、協働ロボットを直接操作するための装置です。このハンドガイドを使用して協働ロボットを操作する場合、ISOは以下のような条件を定めています。
協働作業時の人とロボットの速度と間隔の監視に関して、ISOは以下のように要求しています。
協働ロボットの動力と力の制限に関して、ISOは以下のような条件を定めています。
以上の要求機能をクリアすることで、ロボットと作業者が安全に協働作業できるようになります。
協働ロボットの安全規格においては、リスクアセスメントの実施も要求されています。リスクアセスメントとは、安全性を脅かす潜在的なリスク要因を事前に洗い出して分析・評価を行い、対策を施すことです。
リスクアセスメント実施の手順は以下の通りです。
機械及び周辺機器を含めたロボットシステムの動作に関して、可動範囲や設置場所、動作時間などを決定し動作制限を行います。
安全規格(ISO12100)を参照しながら想定される危険源を特定し、リスクを明確化して分析を行いチェックリストを作成します。
特定した危険源による災害の発生について、「危害の度合」×「発生確率」で計算してレベルを数値化し、それぞれのリスクを評価して対策を考慮します。
ロボットには様々な安全対策が求められますが、一定の条件を満たした場合には、安全柵なしでロボットを使用できるようになります。
その条件は、「リスクアセスメントを実施した結果、人に重篤な危害を加えることが無いと判断できた場合」もしくは「ISOに準拠した、安全性要求を満たした場合」のいずれかです。
人と同じ空間でロボットを使用する場合は、この2点を前提とした安全対策を講じましょう。
協働ロボットを安全に使用するためには、ユーザーとメーカー、双方が連携して安全対策に取り組む必要があります。特に、ロボットシステムが抱えるリスク要因には個体差があり、ロボットの仕様、性能、用途、目的、使用環境など様々な条件でリスク要因やレベルが変化することに対する認識の共有や、メーカーからユーザーへのリスクアセスメントに関する情報提供も重要です。
ユーザーとメーカーが相互に安全対策を施すことによって、協働ロボットの運用における安全性を高めることができます。
協働ロボットの操作は、確かに従来の産業用ロボットよりも容易です。しかし、「協働ロボット=安全が完全に確保されている」というわけではありません。安全な運用を行うには、ユーザー側でも、ロボット操作のトレーニングや安全衛生教育の習得が必要です。
協働ロボットのSIer(システムインテグレーター)や代理店には、導入の担当者に、安全方策のレクチャーを提供しているところもあります。協働ロボットに対する理解を深める手段として検討しましょう。
このサイトでは、性能別に協働ロボットを4つピックアップして紹介しています。導入前に安全性を確認できる実機検証が可能なメーカーもありますので、ぜひ参考にしてみてください。