人間と同じ作業空間で稼働する協働ロボットを導入するには、しっかりとした安全対策を構築することも欠かせません。このページでは、協働ロボットの導入時に求められる安全規格をはじめ、協働ロボットのメーカー・代理店において取り組まれている安全対策についても紹介します。
協働ロボットの導入を検討する際に、あわせて考えなければならないものが「安全規格要求」です。
協業ロボットは、柵や囲いで隔たれることなく、人間と同じ空間で作業を行います。だからこそ、確実な安全対策を構築することが必要です。
協働ロボットのシステムを構築する際は、リスクを洗い出す「リスクアセスメント」をはじめ、運用する上で許容できないリスクがあれば、それを確実に低減する対策を実施する必要があります。
協働ロボットの導入に際しては、事故や災害を避けるための安全対策を行わなければなりません。ここでは、協働ロボットの安全対策のポイントや、安全のために要求される機能や企画、リスクアセスメントの手順などについて紹介していますので、参考にしてください。
協働ロボットを安全に使用するための最大のポイントは、協働ロボットを含む産業用ロボットの安全対策に関わる法令と規格を遵守することです。それらの法令と規格には、ロボットを安全に使用するための規定や仕様が定められていますので、それらを守ることによって、安全な使用が可能になります。
ではロボットの安全対策のための法令と規格には、具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。
協働ロボットの使用における安全を確保するための法令と規格には、以下の4つがあります。
労働安全衛生規則は、労働の安全衛生に関する基準を定めた厚生労働省の省令です。この中の「労働安全衛生規則第150条の4」では、産業用ロボットを使用する際の危険防止について規定しています。
ISO10218-1、ISO10218-2、ISO10218-2は、製品やサービスの標準化を目的とする非営利団体、「国際標準化機構(ISO)」によるロボットシステムに関する安全要求事項を定めた安全規格です。
この内、協働ロボットの効果的な運用に関して注目すべきなのは、労働安全衛生規則です。
産業用ロボットの危険防止を規定した労働安全衛生規則の中の「労働安全衛生規則第150条の4」は、かつて、定格出力80W以上のロボットを稼働させる場合は、安全柵や囲いを設けて、ロボットと作業者を物理的に隔離しなければならない旨を規定していました。
近年、この規制は緩和され、安全性を保つための一定の条件を満たす場合は、80W以上のロボットでも安全柵を設けずに作業者と協働することが可能になりました。この規制緩和により、協働ロボットを有効活用できる幅が広がったのです。
80W規制は緩和されても、協働ロボットの安全対策が不要になるわけではありません。むしろ、ロボットを有効活用しつつ安全を確保するために、いくつかの要求機能や規格が定められています。ISO(国際標準化機構)では、以下の4つの要求機能を定めています。
安全適合の監視・停止機能では、ロボットの監視・停止に関する条件を定めています。ポイントは下記の3点です。
ハンドガイドとは、協働ロボットを直接操作するための装置です。このハンドガイドを使用して協働ロボットを操作する場合、ISOは以下のような条件を定めています。
協働作業時の人とロボットの速度と間隔の監視に関して、ISOは以下のように要求しています。
協働ロボットの動力と力の制限に関して、ISOは以下のような条件を定めています。
以上の要求機能をクリアすることで、ロボットと作業者が安全に協働作業できるようになります。
協働ロボットの安全規格においては、リスクアセスメントの実施も要求されています。リスクアセスメントとは、安全性を脅かす潜在的なリスク要因を事前に洗い出して分析・評価を行い、対策を施すことです。
リスクアセスメント実施の手順は以下の通りです。
機械及び周辺機器を含めたロボットシステムの動作に関して、可動範囲や設置場所、動作時間などを決定し動作制限を行います。
安全規格(ISO12100)を参照しながら想定される危険源を特定し、リスクを明確化して分析を行いチェックリストを作成します。
特定した危険源による災害の発生について、「危害の度合」×「発生確率」で計算してレベルを数値化し、それぞれのリスクを評価して対策を考慮します。
それでは、協働ロボットのプロフェッショナルである代理店は、どのような安全対策に取り組んでいるのでしょうか?
※参照元:住友商事マシネックス 公式HP(https://www.smx.co.jp/)
住友商事マシネックスが取り扱う「Doosan」は、国際機関が認定する最高レベルの安全認証を取得※(取得時期:2018年)するなど、安全に関するパフォーマンスが高い協働ロボットです。
Doosanは25kgまでの重量物を運搬できるパワフルな性能を備えながら、6軸すべてにトルクセンサーを搭載しているため、これまでの協働ロボットでは不可能であったような高精度なセーフティゾーンの設定ができるようになっています。
※参照元:Doosan Robotics公式HP(https://www.doosanrobotics.com/fr/News/NewsDetail/14c67941-ffb3-e911-a84a-000d3a07f6fe)
「協調安全ロボットテクニカルセンター」を開設するなど、企業の協働ロボット導入をサポートしている「IDECグループ」。
専門的な安全資格を有するコンサルティング部門も有しており、導入企業によって異なる実際の活用環境やリスクアセスメント基準を踏まえ、総合的なシステムインテグレーションを提供しています。
協働ロボットを安全に使用するためには、ユーザーとメーカー、双方が連携して安全対策に取り組む必要があります。特に、ロボットシステムが抱えるリスク要因には個体差があり、ロボットの仕様、性能、用途、目的、使用環境など様々な条件でリスク要因やレベルが変化することに対する認識の共有や、メーカーからユーザーへのリスクアセスメントに関する情報提供も重要です。
ユーザーとメーカーが相互に安全対策を施すことによって、協働ロボットの運用における安全性を高めることができます。
協働ロボットの操作は、確かに従来の産業ロボットよりも容易です。しかし、「協働ロボット=安全が確保されている」というわけではありません。安全な運用を行うには、ユーザー側でも、ロボット操作のトレーニングや安全衛生教育の習得が必要です。
協働ロボットのシステムインテグレーターや代理店には、導入の担当者に、安全方策のレクチャーを提供しているところもあります。協働ロボットに対する理解を深めましょう。
※引用元:Doosan Robotics公式HP(https://www.cobot-smx.jp/products/m0609.html)
※引用元:ユニバーサルロボット公式HP(https://www.universal-robots.com/ja/ユニバーサルロボットについて/ニュースセンター/ユニバーサルロボット-smc社の協働ロボット用真空グリッパユニットを-urplus製品として認証/)
※引用元:Techman Robot公式HP(https://www.tm-robot.com/ja/heavy-payload/)
※選出基準(調査時期:2021年7月、編集チーム調べ)
「性能」:汎用性の高さを維持できる100kg以下の協働ロボットのうち、最大可搬重量・最大リーチ数を誇っている点。
「シェア」:世界シェアNo.1※1の協働ロボットである点。
「簡易性」:カメラ内蔵型協働ロボットを世界で初めて開発※2し、視覚による操作性を実現した協働ロボットである点。
※1参照元:ロボットによる社会変革推進会議2019年調査[PDF](https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/robot_shakaihenkaku/pdf/20190724_report_01.pdf)
※2参照元:SSI公式HP(https://ssi-robot.co.jp/tm-robot/)