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協働ロボットと5G技術

目次

このページでは、協働ロボットへ5G(第5世代通信)の情報通信システムを活用するメリットや課題についてまとめています。

5G技術とは

情報通信システムや無線通信システムの分野における「5G」とは「第5世代通信/第5世代移動通信システム」を意味しており、従来の4G無線通信システムと比較して高速かつ大容量の情報通信を実現させる技術やそのシステムプラットフォームです。

5Gでは4Gよりも高周波数帯を利用した無線通信をベースとしており、超広帯域伝送を仕様とすることで伝達できる情報の量を増大しつつ、高速な通信を可能とすることで、低遅延や多数接続といったニーズにも幅広く対応しています。

5Gの運用方式

5Gの運用方式として、「NSA方式(ノン・スタンドアローン方式)」と「SA方式(スタンドアローン方式)」の2つがあり、NSA方式は5Gの基地局と4Gのコア装置を組み合わせたシステム構成によってまかなわれ、SA方式では基地局もコア装置も全て5Gを前提としたものに刷新されます。

NSA方式は、既存の4G(LTE)ネットワークの一部を活用しながら5Gサービスを提供する方法で、初期導入が容易ですが、5Gの特性を完全には活かしきれない場合がありますが、SA方式は、ネットワーク全体を5G専用に構築する方法で、低遅延や多数同時接続といった5Gの特性を活用できます。ただし、SA方式の導入には新たなインフラ整備が必要となるため、コストや時間がかかるという課題もあります。

協働ロボットに5G技術を使用するメリット

工場内でシステムや協働ロボットなどを活用するに当たって、常に管理システムとデバイスやロボットを優先で接続しているとは限りません。そのため無線通信によって協働ロボットや各種マシンを制御する際にも、5G技術を活用することで様々なメリットを得られることは重要です。

協働ロボットの運用・管理体制や基本システムに5G技術を活用することで得られるメリットとして、例えば以下のようなものが挙げられます。

ネットワークインフラストラクチャ

工場内に5G基地局を設置してSA方式による5G運用を可能にすることで、安定した通信システムを整備できるだけでなく、協働ロボットの他にも5G技術を活用しやすい環境を構築できます。

また、高速・大容量通信やバックホール回線の活用によって、作業員が持つデバイスやクラウドシステムなどとの連携を促進し、様々な情報管理や機能制御の一元化にも貢献できるでしょう。

通信プロトコルとセキュリティ

5G技術では従来の無線通信システムよりも伝達できる情報量が多いため、より複雑なデータ暗号化や認証機構を採用し、セキュリティを強化して情報管理の安全性を高められることもメリットです。また、MQTTやOPC UAといった産業用途や自社のニーズに合わせて通信プロトコルを選択できることもポイントです。

リアルタイム制御とデータ処理

高速通信による遅延の低減を活用することで、情報の伝達におけるタイムラグを解消し、即時的な情報管理や大容量データのリアルタイム制御といったニーズにも対応させることが可能になります。また、これによって複数のセンサからのデータ受信や、複数の制御装置からのフィードバックをまとめてマネジメントできるようになり、協働ロボットの周囲で働く作業員への危険を回避したり事故の発生を低減したりといった環境の実現にも貢献します。

その他にもクラウドサービスとの連携を強化することで、データの長期保存や速やかな情報活用といったニーズも叶えられることがメリットです。

ソフトウェアとインターフェース

5Gの導入に当たってシステムや設備機器を刷新することで、改めてFA化の実現や総合管理プラットフォームの構築を企画したり、自社の業務フローや作業員のニーズに合わせたユーザーインターフェース(UI)を開発したりしやすいことも魅力です。

エッジコンピューティングの活用

エッジコンピューティングとは、クラウドのように遠隔サーバで情報を一元管理するシステムと対照的に、情報を収集・発信するデバイスや目的の情報を活用するユーザーの近くへ、情報を保存する環境や計算能力といったプロセスを配置するシステム構成の概念及び仕様です。

5G技術と協働ロボットの併用によるメリット強化を目指す上で、オンプレミス型の環境構築とSA方式の5G通信環境を整えることにより、即時的なデータ解析や情報分析能力を一層に向上させて低遅延なメリットを追求することができます。

また、クラウドによって管理する情報を抑制することでサーバ負荷を低減し、ネットワーク全体の安定性を高められることもメリットです。

5Gの実装ステップ

現状分析と要件定義

5Gの実装や協働ロボットの導入を進める前に、まず現状の課題の分析や必要とされる機能といったニーズを明確化し、それにもとづいて適切な要件定義を行わなければなりません。

ネットワーク設計

5Gの導入に当たっては情報インフラの構築が不可欠であり、定義した要件にもとづいてネットワーク設計やそのためのプランニングを行います。

ハードウェア・ソフトウェアの選定

どのようなハードウェアやソフトウェアが必要となるのか、協働ロボットの仕様や管理デバイスの種類、マネジメントシステムの選定などもしっかりと考えることが必要です。

セキュリティ対策の実装

無線通信環境によって協働ロボットの制御や各種情報の収集・分析を実行する場合、当然ながら安定・安心のセキュリティ環境を構築しなければなりません。

また、セキュリティ対策は悪意ある第三者や外部からのアクセスに備えるだけでなく、場内における情報伝達や管理体制といった対内的な安全性も含めて検討します。

システム統合とテスト

通信環境と協働ロボット、あるいは管理システムなど各種コンポーネントやソフトウェアの統合を行い、あらかじめ動作テストを実施してきちんと運用体制を確立できているかチェックすることも不可欠です。

なお、システムチェックはいきなり実環境を構築するのでなく、シミュレーションツールも併用して仮想的なチェックも段階的に行います。

運用と保守

5Gや協働ロボットなどを導入・運用開始した時点で全てが完了するのでなく、その後は安定した機能を担保できるよう、定期的なメンテナンスやシステムのアップデートを実施して、常に信頼できる動作環境を維持していくことも重要です。

課題と対策

5Gと協働ロボットの併用は様々なメリットを追求して生産性の向上や安全性の強化に貢献する一方、初期コストやシステム構築の複雑さといった課題が存在することも無視できません。

また、通信環境の安全性やセキュリティ対策についても恒久的なマネジメントが必要になる上、従来の業務フローから内容が変更される場合は作業に携わる従業員の研修やトレーニングといったカリキュラムの実施も必要です。

適切な対策によって5Gと協働ロボットの価値を最大化

高速・大容量の通信を叶える5Gと、常に作業員と一緒に働く協働ロボットの併用は、安全性の強化や生産性の向上、機能性の拡充など幅広いメリットを叶えられるアイデアであり、現代の産業分野における競争力の強化や差別化戦略の実現に貢献します。

一方、自社のニーズや環境に合わせたシステム導入には課題や注意点も存在しており、十分な導入価値により持続可能な成長の土台を構築するためにも、本ページで挙げたようなポイントを踏まえて専門家のサポートも受けながら適切な対策を進めていきましょう。

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