このページでは、協働ロボットの導入が進む理由や、導入を推進する過去の国の取り組みについてご紹介します。
自動車産業や電気機器産業を中心に導入されてきた産業用ロボット。単純作業に向いている一方で、変種変量の対応が求められる分野には不向きであったり、安全確保のために人が入れない危険エリアを柵で囲う必要があったりするなどのデメリットもありました。
しかしながら、 規制緩和や近年のさらなる技術革新などによって、人と協力しながら同じ空間で作業を行なう「協働ロボット」を導入する企業が増えています。
前述したように、従来の産業用ロボットは柵によって人間の作業スペースから隔離することが法律で義務付けられていました。しかし、2013年に施行された規制緩和によって、 ISO(国際標準化機構)の定める条件を満たせばモーター出力80Wの産業用ロボットでも柵なしで設置・作業することが可能になりました。
これによって、設置場所を選ばなくなったことはもとより、運用コストの軽減や、人が介入することでより柔軟且つ精密な作業に対応できるようになり、中小製造業の導入ハードルが下がったと考えられます。
産業用ロボット導入の際には、プログラミングやインテグレーションが必要であり、そこにも大きなコストがかかっていました。
しかしながら、様々な技術革新によってこれらの負担が軽減され、導入へのコストや期間の短縮が可能に。さらに、ISOを満たすための各メーカーの技術の向上によって安全性が高まったことも、導入を検討する企業が増えた大きな要因といえるでしょう。
少子高齢化によって人手不足が深刻化しており、なかでも製造業は人材確保が難しいといわれています。 そのため、少ない人員で生産性を向上させ、さらにより細かなニーズに応える製品を生産するため、人と一緒に働くことができる協働ロボットに注目が集まっています。
次のページでは、特性別に協働ロボットを4つピックアップして紹介しています。導入を検討する際に参考にしてみてください。
2015年2月に日本経済再生本部が決定したロボット新戦略。ロボット革命を実現するべく、日本では「世界一のロボット利活用社会」を目指しています。
そこで経済産業省ではロボット導入実証事業に着手し、ものづくり・サービス分野におけるロボット導入の実証や検証を進めています。具体的には、ロボット未活用領域でロボット導入実証を行う場合の費用の一部を補助金として支給していました(現在、募集は行われていません)。
たとえば食品・化粧品・医薬品産業の三品産業やサービス産業を行う事業者がこれまで未活用であった領域でロボット導入実証を行う場合、最大3,000万円まで(中小企業2/3、大企業や中小企業以外1/3)を補助しました。
現在も募集中の補助金等各種制度については、各自治体や関連団体の公式HPや公募要領を参照してください。
リネンクリーニングを行っている工場では、タオルの結束工程に課題を抱えていました。タオルの結束工程は時期によって処理量にバラつきがあり、作業員を増減させて対応していました。そこで生産性向上のため、ロボットを導入。自動でタオルを結束してコンベアへ搬送できるようにしました。処理量が多いときには人が作業を手伝える仕様になっており、少人数でも効率良く作業を行えるようになったのだそうです。
通貨機器の組立を行う工場では、品質保証のため組立工数の約25%を検査作業にあてています。しかし検査作業を作業員が長時間集中して行うことに限界を感じており、ロボットを導入。検査機器を持つことができる双腕ロボットを導入し、画像照合による外観検査を実現しました。その結果、作業員の負担を軽減できただけではなく、品質の安定によって不良品流出の不安からも解放されたとのことです。
水産物の加工を行っている工場では、殻をむくため原料貝を機械へ投入する作業を作業員が行っていました。しかし作業員の高齢化やより厳格な衛生管理の実現に課題を抱えていたため、ロボットを導入。ロボットでは画像で貝の向きや形状、大きさを判別・選別し、向きを揃えて機械へ投入できます。作業員の負担が軽減されたうえ、衛生管理のレベルもアップしました。
南部鉄器の製造を行う工場では、仕上げ工程で行う琺瑯引き(ほうろうびき)に熟練技が必要とされていました。しかし人手不足の解消や品質の安定にロボットが必要であり、垂直多関節ロボットを導入。熟練作業者と同レベルでの琺瑯工程を実現しました。作業効率向上だけではなく、作業者の荷重作業の負担軽減にもつながったのだそうです。
「日経 xTECH」が2018年に実施した調査によると、すでに 協働ロボットを導入している企業は19.1%、導入を検討している企業は32.9%となっており、さらに「日本で協働ロボットの導入が拡大すると思いますか」という問いに対しても「かなり拡大する」「少し拡大する」が90%以上を占めるなど、協働ロボットへの高い期待が伺えます。
下記のページでは、業種ごとの協働ロボット活用事例を紹介しています。現場で協働ロボットを効果的に活用するために、ぜひ参考にしてみてください。