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協働ロボットの多品種少量生産現場における活用と限界

協働ロボット(コラボレーティブロボットまたはコボット)は、従来の産業用ロボットとは異なり、安全柵なしで人間と同じ空間で作業できる特性を持ち、多品種少量生産の製造現場において革新的なソリューションとして注目を集めています。これらのロボットは、柔軟な配置が可能で、プログラミングが容易なことから、頻繁に変更が必要な生産ラインに適しています。現場での活用事例は多岐にわたり、部品組立から搬送まで様々な工程で効率化を実現していますが、導入コストや技術的な制約などの限界も存在します。

多品種少量生産の背景と課題

多品種少量生産とは、同一の工場で類似性の低い製品を多品種に少量ずつ生産する生産方式です。従来の製造現場では、単一の製品を大量に生産する大量生産方式が主流でしたが、近年の市場環境の変化により、多品種少量生産の必要性が高まっています。

多品種少量生産が求められる理由

顧客ニーズの多様化や商品ライフサイクルの短縮化により、年齢、地域、個々の趣味嗜好に応じた多彩な製品ラインアップが求められるようになりました。多品種少量生産は在庫リスクを減らし、売れた商品のみを少量ずつ増産することで売り逃しリスクも軽減できるというメリットがあります。

多品種少量生産の課題

多品種少量生産には大量生産にはない課題が存在します。主な課題として以下の点が挙げられます:

  1. 生産コストの上昇:少量生産では規模の経済が働かず、単位あたりの生産コストが上昇します。
  2. 生産効率の低下:商品の仕様ごとにラインを変更する必要があり、その都度段取り替えが発生するため生産効率が低下します。
  3. 人材不足:多品種少量生産は柔軟な対応が求められるため、熟練した作業者が必要となりますが、多くの製造業は人手不足の問題に直面しています。

これらの課題を解決するために、協働ロボットの導入が進んでいます。

協働ロボットの特長と多品種少量生産への適合性

従来型ロボットとの違い

従来型の産業用ロボットは大量生産向けであり、安全柵の設置が必要なため、主に工場の大型ラインで人と分離した状況で固定的に使用されてきました。対照的に、協働ロボットは安全柵なしでも利用可能で、人と同じ空間で作業を行うことができます。

多品種少量生産に適している理由

移動や作業環境の柔軟さ

協働ロボットは安全柵が不要なため、生産ラインの変更に応じて容易に移動できます。工程間の移設が可能となり、狭いスペースや人が介在する生産ラインなど、様々な環境でロボットが活用できるようになりました。

ティーチングの容易さ

協働ロボットは、高度なプログラミング知識がなくても動作設定ができる特徴があります。簡単に記述できる設定ツールの搭載や、ロボットに直接触って動作を設定するダイレクトティーチングが可能なため、製品仕様の変更に迅速に対応できます。

これらの特徴により、製品の仕様ごとに生じるライン変更に柔軟に対応することができ、ライン変更のための工数やコストを削減できるようになりました。

協働ロボット導入の成功事例

オムロン上海有限公司の事例

オムロン上海有限公司では、2万2000点にもおよぶ多品種少量生産を実現するために、コンポーネント組立現場で協調ロボットTMシリーズを導入しています。

TMシリーズは「TMランドマーク」という座標でワークの位置を把握し、配置換え後も簡単に再起動することができます。段取り替えごとの再ティーチングも不要なため、頻繁に作業工程が変わる組立現場で稼働率を下げずに生産できるようになりました。ロボットへの投資も短期間で回収し、作業者の負担も減少しました。

参照元:オムロン公式HP(https://www.fa.omron.co.jp/product/special/library/robotics/highmixlowvolume-production/

搬送作業の自動化事例

多品種少量生産のライン変更の課題に対して、AMR(自律走行搬送ロボット)の活用も進んでいます。AMRは人や物にぶつからずに最も効率的なルートを自動で選択しながら、指定されたゴールに向かって走行できます。

オムロンのAMRシステムでは、最大100台の現在位置、稼働状況、空き状況を常に管理・把握しつつ、それぞれのロボットを最適な搬送ルートで走行させることができます。これにより、セル生産やコンベアライン間において無駄な搬送動作や工程間の停滞を削減し、設備投資を極力抑えつつ、多品種少量生産の効率的なラインが実現できます。

参照元:オムロン公式HP(https://www.fa.omron.co.jp/solution/proposal/app_002/index.html

協働ロボット導入の限界と課題

検索結果からは協働ロボットの導入における限界や課題について直接的な記述は少ないですが、提供された情報から以下のような限界と課題が推測されます。

技術的な限界

協働ロボットは従来の産業用ロボットと比較して、一般的にパワーや速度、精度などに制限があります。安全性を確保するために動作速度や力を制限する必要があるため、重量物の高速処理や超精密作業には不向きな場合があります。

導入コストの課題

協働ロボットは従来のロボットと比較すると比較的安価ですが、依然として中小企業にとっては大きな投資となります。検索結果には「投資も短期間で回収」という記述がありますが、初期投資が課題となるケースも考えられます。

適用範囲の限界

多品種少量生産の全ての工程に協働ロボットが適用できるわけではありません。特に、熟練技能を要する複雑な作業や、状況判断が必要な作業においては、現状では人間の作業者に依存する部分が大きいと考えられます。

人材育成の必要性

協働ロボットはティーチングが容易であるとはいえ、導入や運用にはロボット技術に関する一定の知識が必要です。ロボットを効果的に活用するための人材育成や教育が課題となる可能性があります。

生産計画・管理の複雑化

協働ロボットを導入した多品種少量生産ラインでは、製品切り替えの頻度が高く、生産計画や管理が複雑になる可能性があります。効率的な運用のためには、生産管理システムの高度化も必要になると考えられます。

結論

協働ロボットは多品種少量生産の現場において、その柔軟性、移動性、簡易なティーチング機能などの特長を活かし、様々な作業工程で活用されています。ボルト締め、部品の取り出し、パレタイジングなどの作業自動化から、AMRとの連携による搬送自動化まで、幅広い応用例が見られます。

オムロン上海の事例のように、2万点以上の多品種少量生産においても協働ロボットの導入により生産性向上とコスト削減を実現している企業もあります。しかし、初期投資コスト、技術的な制限、適用範囲の限界、人材育成の必要性など、導入にあたっては考慮すべき限界や課題も存在します。

今後は、AI技術の進化によるロボットの知能化、IoTとの連携によるスマートファクトリー化など、さらなる技術発展により、協働ロボットの適用範囲は拡大し、多品種少量生産の課題解決に一層貢献していくことが期待されます。製造業が直面する人手不足と多様化する市場ニーズに対応するために、協働ロボットは重要な役割を果たしていくでしょう。

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