協働ロボットを導入するにあたり、何に対してどれほど費用がかかるのか把握できていなければ、導入による費用対効果を感じにくいでしょう。ここでは、協働ロボットの導入にかかる費用についてまとめています。
協働ロボットの導入にかかる費用は、本体価格だけではありません。以下の4つに大別できます。
協働ロボットの本体価格は、メーカーや製品の性能などにより幅があります。100万円以下で入手できる場合もありますが、500万円程度かかる場合もあり、様々です。一般的には200万円~500万円が目安とされています※。
協働ロボットの関連装置とは、本体を設置するための「架台」、モノを掴む, 吸着するための「ロボットハンド」、対象物を認識して処理する「画像センサ」、ロボットを移動させるための「ロボット搬送装置」などです。
これらの費用もメーカーや製品、グレードによって様々ですが、それぞれを複数台導入すると仮定した場合、数百万円はかかる可能性があります。
協働ロボットの周辺設備機器とは、ベルトコンベア、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、安全柵、ワークストッカー、製函機などです。これらの費用もメーカーやサイズによって様々ですが、数百万円から場合によってはそれ以上かかる可能性もあります。
システムインテグレータ費用は、ロボットの設計から周辺機器の手配、システムの組立、ティーチング、特別教育など、協働ロボットの導入をサポートしてくれるコンサル会社に支払う費用です。これについても、設計から組立、調整、運搬、安全講習など多岐にわたる費目があり、数百万円から場合によっては一千万円以上かかる可能性があります。
協働ロボットを導入することで実際にどの程度の利益を得られるのか、具体的に試算する際は協働ロボットの導入や維持管理にかかるコストと、協働ロボットを活用することで得られる売上増加や生産性向上といったメリットを比較して差し引くことが基本となります。
協働ロボットのコストとしては導入にかかる総費用と、継続的に協働ロボットを活用していく上で発生するランニングコストを合算することで考えられますが、メリットについては様々な要素を加味して総合的に考えなければなりません。
協働ロボット導入によって得られる恩恵やプラスの効果としては以下のようなものが考えられます。
協働ロボットを導入することで作業効率が改善すれば、必然的に生産性も向上して時間単位の生産量を増加させることが可能となります。これにより一層の販売力の強化を追求し、売上増加へつなげられることは重要です。
協働ロボットによって作業に要する人員の数や作業時間を削減できれば、結果的に人件費の節減につながり、経費としてのロスを軽減することができます。
経費節減は利益率の向上に直接寄与する要素であり、プラスの効果として考えることが可能です。
製造される製品の品質が向上することで、顧客への訴求効果を強化し、不良品の発生によるロスの抑制も期待できます。また市場における製品の信頼性を高めて販売促進効果を得られることもポイントです。加えて、新製品の開発や製造を叶えられれば、さらに販路拡大や販売価格の値上げといった施策を実行することもできます。
協働ロボットの導入により作業員の負担を軽減することで、労務環境や労働環境の改善を追求することが可能です。これは従業員の離職防止やモチベーションアップにつながる上、労働災害の発生リスクを軽減するため、突発的なトラブルの対応にかかるコストを節減してロスの低下にもつながります。
生産性を向上させるだけでなく、オートメーション化によって連続作業時間を延長したり、いっそ24時間体制の製造環境を構築したりすることで、総合的な生産量を増やして販売力の底上げを図ることも可能となります。
協働ロボット導入を事業投資として考えた場合、投資にかかった費用をどの程度の期間で回収できるのかシミュレーションすることで、事業戦略としての価値を計算することが可能です。
基本的に、投資の回収にかかる期間と、協働ロボットの耐用年数や実用年数を比較して、前者の方が短ければ協働ロボットには投資価値があると判断できるでしょう。
具体的には以下のような算式によって投資回収期間を計算することができます。
また、年間利益増加額は以下の算式で表すこともポイントです。
例えば、協働ロボットの本体価格や関連設備を含めた諸費用が5千万円であったとして、維持費として年間100万円が発生し、ロスの節減や生産性向上によって増加する収益が1100万円であった場合、回収期間は以下のようになります。
つまり、このケースであれば5年が投資回収に必要な期間となり、6年目以降は協働ロボットの効果は純粋に事業利益の増加として期待することが可能です。
上記のシミュレーションはあくまでも大まかなものであり、実際にはさらに様々な要素によって初期コストやランニングコスト、経費節減効果などを強化できることもポイントです。
協働ロボットの導入コストは減価償却によって一定期間、毎年の売上から経費として減算することが可能であり、節税対策に活用することができます。
なお、協働ロボットは事業活動に要する機械・装置として考えられ、設備の種類や用途によって法的に耐用年数が定められており、例えば食料品製造業用設備であれば10年、金属製品製造業用設備であれば6年もしくは10年といった期間になります。
なお、これらはあくまでも税法上の耐用年数であり、実際に使用可能な実用期間は通常それより長い点も重要です。
国や地方自治体は、多様化する労働スタイルや人材不足への企業の取り組みや、環境負荷の軽減による持続可能な社会の実現に向けた施策について様々な補助金や助成制度を用意しており、これらの補助金を活用することで初期コストを低減することもできます。
協働ロボットの導入やDX化、FA化といった取り組みについては、例えば中小企業・小規模事業者が活用できる「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などがあります。
自社で協働ロボットを購入しようと思っても初期費用が大きすぎると感じる場合、リースやレンタルといったサービスを利用して、実際の費用対効果を検証するといった方法も戦略の1つです。
協働ロボット導入の初期コストをまかなうために融資を受ける場合、利息などの条件も考えなければなりません。なお、自治体や商工会議所などでは企業の事業成長を支援するため、企業側にメリットのある融資条件を設定している場合もあります。
コストベネフィット分析(費用便益分析)は、対象のプロジェクトにおける「コスト(費用)」と「ベネフィット(便益)」を総合的に比較検証して、投資効果やメリットといった投資価値・費用対効果を判断する手法です。
コストベネフィット分析は現状で見えている数字を使った定量的な評価だけでなく、将来的な価値を含めた定性的な効果も合わせて検討し、長期的な視野で事業戦略に組み込むことが大切になります。
協働ロボットの導入は会社にとって大きな投資になりますので、費用の内訳と総額を含めてコスト計算を綿密に行い、資金計画と費用対効果を考えることが大切です。
一方、協働ロボットの導入費用は今後下落していく可能性があります。矢野経済研究所の予測によれば、協働ロボットの本体価格は、2030年には2020年と比べて3割程度下落する可能性があるとのこと。実際に協働ロボット市場に参入する企業は増えており、それによって関連部品のコスト削減が実現すれば、本体価格下落の予測も現実味を帯びてくるでしょう。
以下のページでは、様々な特徴を持つ協働ロボットメーカーを一覧で確認できます。導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。