協働ロボットを導入して生産効率を向上させつつ、コスト削減や品質向上といったメリットを得るためには、生産ラインに対して最適なサイクルタイム(CT)を導き出すことが重要となります。
このページでは、協働ロボットとCTの関係性や、CTの最適化における注意点などをまとめましたので参考にしてください。
製造業界における「サイクルタイム(CT:Cycle Time)」とは、1つの生産工程(サイクル)を最初から最後まで完了し、1つの製品を製造するためにかかる「時間」です。
例えば素材の鋼板を加工機へ投入し、自動的に多段階的な加工が行われ、最終的に仕上げ処理が行われるまで15分かかるとすれば、そのサイクルタイムも「15分」となります。
なお、関連する用語で「リードタイム」や「タクトタイム」という言葉がありますが、リードタイムは発注から納品までに発生する一連の工程を対象とした時間であり、タクトタイムは作業場における1日の稼働時間となります。
サイクルタイムを測定する場合、生産設備の稼働時間を、実際に生産された製品の個数で割ることによって求めることが可能です。例えば以下のような算式でサイクルタイムを計算することができます。
なお、もっとシンプルな方法として、一連の作業をストップウォッチなどで直接計測することも可能です。
協働ロボットの性能や動作スピードはサイクルタイムへ直接に影響する要因です。またセンサーの反応速度やフィードバック速度なども影響します。
温度や湿度、素材の特性など環境変数も影響します。例えば高温の素材が冷めるまで待つ場合、必然的に温度変化による影響を無視できません。
協働ロボットの設定・処理にかかる時間や、制御システムの動作性能、データ処理速度といった要素もサイクルタイムの長短を左右するポイントです。
協働ロボットを取り扱うオペレーターの作業スキルや、一緒に働く作業員の働き方や業務フローといった人的要因もサイクルタイムを考える上で重要です。
当然ながら高性能なロボットやシステムを導入すればサイクルタイムは短縮されます。また、高速作業に対応した部品へ交換したり、高精度のセンサーを導入したりするといった方法もあるでしょう。
コンピュータそのものの処理速度は向上できなくとも、ソフトウェアを最適化することでシステムの稼働にかかるタイムロスを軽減し、サイクルタイムを短縮することが可能です。
効率的な作業プロセスや業務オペレーションを確立することによって、生産性を向上させてサイクルタイムやタクトタイムを総合的に最適化することができます。また作業環境の適正化や設備レイアウトの見直しといった取り組みも大切です。
サイクルタイムに影響する要因は多種多様であり、色々なパターンごとにサイクルタイムを比較して、どのような部分でタイムロスや停滞が発生しているのか分析し、改めてプランの検証を追求していく取り組みは欠かせません。
機械装置の設計や開発を行っている株式会社ナムでは、協働ロボットを2台導入したことで、自動車部品の組付けにかかるサイクルタイムを導入前と比較して36%も短縮することに成功しています。
参照元:OMRON公式HP(https://www.fa.omron.co.jp/solution/case/col_020/)
計測器や各種制御機器のメーカーとして様々なニーズへ対応している株式会社マツシマメジャテックでは、協働ロボットを導入して生産ラインを自動化した結果、夜間に従業員がいない時でも製造を続けられるようになり生産性が2倍に向上しました。
また各工程の連携もスムーズになりサイクルタイムも改善されているようです。
参照元:安川電機公式HP(https://www.yaskawa.co.jp/applications/matsushima)
マシンテンディングとは、加工機の準備や操作、製品の取り出しといった一連のオペレーター作業を指しており、協働ロボットによってマシンテンディングを自動化することで一連の作業を効率化してサイクルタイムの削減にもつなげることが可能です。
なお、国際的なロボットメーカーとして知られる「ABB」では、マシンテンディングの自動化に特化した協働ロボットの開発なども行っています。
データ収集や分析に人工知能(AI)やディープラーニングを活用することで最適化に必要なポイントの把握を行いやすくなる上、改善点についても発見しやすくなると期待されます。
協働ロボットの性能向上に寄与する素材や技術が開発されれば、今後さらにサイクルタイムの短縮も可能となるでしょう。
現状の課題や問題点を認識した上で、作業員が効率的に活動できるフローやオペレーションを構築できれば、一層に作業場全体の生産性を高めて、サイクルタイムの適正化にも貢献します。
協働ロボットの継続的な運用や持続可能な取り組みによって、作業の安定性を高めることで、作業の停滞を回避してロスを軽減し、長期的に見た場合のサイクルタイムの軽減に役立ちます。
製品の製造にかかるサイクルタイムは、そのまま協働ロボットを導入した場合の生産性や効率性の象徴です。そのため、専門家にも相談しながらサイクルタイムを適切に検証して最適化に向けた取り組みを考えることで、協働ロボットの導入メリットをさらに追求していくことが可能になるでしょう。