このページでは、協働ロボットの市場の傾向から今後の見通しについて、データを元に解説しています。
「Report Ocean」発行のレポートによると、産業用ロボットの世界市場規模は2030年に116,848.7万米ドルに達すると予測されており、2030年にかけて年平均11.8%成長するのではないかと考えられています。(※1)
世界中でロボットが活用されており、自動車産業や電気・エレクトロニクス産業、金属・機械産業などを中心に導入が進んでいます。(※2)
参照元1:PR TIMES「産業用ロボット市場は2030年まで年平均成長率11.8%で成長する見込み」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005380.000067400.html)
参照元2:経済産業省「ロボットを取り巻く環境変化等について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/robot_shakaihenkaku/pdf/001_03_00.pdf)
ロボット産業が伸びている理由としては、「人口減少による労働力不足」「技術の伝承問題」「安定生産や品質向上のための産業の自動化」などが挙げられます。 欧州や日本では人口減少が深刻化しており、労働力も不足しています。また、中国では人件費の高騰という背景や、品質向上の目的のため、産業用ロボットの導入が進められているのです。
さらに、協働ロボットの登場によってロボット導入のハードルが下がったことも後押ししています。これまで産業用ロボットでは安全柵の設置や広い設置スペース、ロボットエンジニアによるプログラミングなどが必要でした。
しかし、協働ロボットには安全柵が必要なく省スペースで設置できるうえ、プログラミングが容易というメリットがあります。中小企業などでも導入しやすくなったことで、ロボット導入を検討する企業が増えているようです。
以下のページでは、業種や用途別に協働ロボットの導入事例を紹介。普及が進む協働ロボットを自社でどのように活用できるのか、導入前の参考としてご活用ください。
今後も拡大が見込まれるロボット市場ですが、とくに協働ロボット市場は順調な成長を見せています。
「Panorama Data Insights Ltd.」のレポートでは、協働ロボットの世界市場規模は、2030年までの予測期間において年平均成長率(CAGR)46.4%で成長し、2030年には401.6億米ドルに達すると予測されています。(※)協働ロボットにおける新技術の開発や周辺機器の高性能化・高機能化が進んでおり、導入する業界や需要が今後も増加していくものと考えられています。
なお、協働ロボットは、製造現場以外でも導入が進んでいます。たとえば韓国では、非対面でのサービス提供を目的に、飲食業界などで協働ロボットを導入。製造業向けの需要減少をカバーできるほどの出荷数を記録しているようです。
協働ロボット(コボット)は、人と同じ作業空間で安全に作業ができる新世代の産業用ロボットとして、近年急速に注目を集めています。従来の産業用ロボットとは異なり、安全柵が不要で省スペースでも設置可能であることから、現場環境に柔軟に対応できるのが特長です。
特に、中小企業においては導入コストや技術者不足が障壁とされてきましたが、協働ロボットは比較的低コストで導入でき、プログラミング知識を必要としないモデルも増えたことで、その利用範囲が広がりつつあります。
近年の人手不足、長時間労働の是正、自動化のニーズを背景に、多くの企業が生産性と安全性の両立を目的として導入を進めています。市場調査によれば、協働ロボットの世界市場は2033年に3兆円規模に達すると予測されており、次世代の製造業やサービス業を支える中核技術として、強い期待が寄せられています。
2021年時点での世界出荷台数は約4万4,000台、金額にして約1,500億円に上ります。矢野経済研究所や日経BPなどの調査によれば、2033年には出荷台数が約68万台に達し、2024年比で7.4倍という急成長が見込まれています。
また、最も楽観的なシナリオでは市場規模が約3兆円に達し、保守的な予測でも2.6兆円台と評価されています。これは単なる数量の拡大だけでなく、活用分野の広がりや機能面での高度化による価値創出の結果でもあります。
近年では、日本、米国、ドイツ、韓国、中国などが主要な成長地域とされ、特に中国では政府主導で製造業の高度化を進めていることから、導入スピードが加速しています。
企業が協働ロボットの導入を急ぐ背景には、深刻化する人手不足や熟練技能者の引退による技能継承の難しさがあります。特に製造業では、単純作業から高度なスキルを要する工程まで、安定して作業を担える人材の確保が難しくなっています。
また、高品質な製品を安定供給する体制を築くためには、人間の手作業に頼る部分をロボットで補完し、品質のばらつきを抑えることが重要です。多品種少量生産や短納期対応が求められる現代の製造現場において、柔軟性を持った協働ロボットは最適な選択肢となっています。
さらに、労働環境の改善や長時間労働の是正、従業員の安全確保といった企業の社会的責任(CSR)の観点からも、協働ロボットの導入は有効とされています。
自動車業界では、ボルト締めや小型部品の組立、パレタイジングなどで導入が進み、作業の均一化やタクトタイムの短縮に貢献しています。電子機器分野では、静電気対策やミクロン単位の高精度作業を必要とする工程において活用されています。
食品や医薬品業界では、洗浄可能な衛生仕様モデルや防水・防塵性能を備えた機種が使用されており、クリーンルーム内での作業や異物混入リスクの低減にもつながっています。
さらに近年では、非製造業での導入事例も増えており、飲食業界では調理補助や配膳、物流業界では仕分けや搬送、農業では収穫補助、医療分野では検体運搬やリハビリ支援など、幅広い用途で活用されています。
導入メリットとしては、人材不足の補完、作業の標準化、作業者の負荷軽減、業務効率化、さらには24時間稼働による生産性向上が挙げられます。
AIやセンシング技術の進化により、協働ロボットの設定やティーチング作業はかつてないほど簡素化されています。かつてはエンジニアの手によるプログラミングが不可欠でしたが、現在は直感的なGUIやノーコード環境により、現場の作業者でも操作可能な設計が増えています。
また、「ロボット・アズ・ア・サービス(RaaS)」という、月額や使用量に応じて料金を支払うサブスクリプション型の導入モデルが普及し、初期投資を抑えた導入が可能となりました。このモデルは特に中小企業やサービス業において支持を集めており、導入リスクの低減にも寄与しています。
市場には、Universal Robots(デンマーク)、FANUC(日本)、ABB(スイス)、KUKA(ドイツ)、YASKAWA(日本)といった有力メーカーが競い合っています。
これらの企業は、それぞれの得意分野や業種への適応性を活かし、たとえば医薬品・食品向けにはクリーン設計のロボット、電子機器分野には高精度の短アーム型、狭所作業に特化したモデルなど、多様な製品をラインナップしています。
近年ではスタートアップ企業によるソフトウェア面の革新や、クラウドと連携したデータ管理機能の提供など、周辺サービスを含めた総合提案型の競争が強まっており、市場はますます多様化しています。
協働ロボットの導入拡大が進む一方で、現場での実運用における教育体制の整備や、既存業務との最適な役割分担、スキル継承といった人的側面の課題は依然として残っています。
また、国ごとに異なる安全規格や、ロボットと人との接触リスクを最小限に抑えるための法的基準への対応も不可欠です。
とはいえ、スマートファクトリー化の加速、AIとの統合によるリアルタイム制御、予知保全や遠隔操作といった新技術の台頭により、協働ロボットは単なる作業補助から「考えるロボット」へと進化を遂げつつあります。今後はサービス業や家庭用分野への応用も期待されており、市場の可能性はさらに広がっていくでしょう。
協働ロボットは、単なる人手の代替ではなく、企業が直面する生産性・安全性・柔軟性といった多角的な課題を同時に解決するソリューションとして、今後ますます不可欠な存在となります。
導入に対する技術的・経済的なハードルは年々低下しており、導入を先送りするリスクの方が大きくなる時代に入っています。競争力の維持・強化を目指す企業にとって、今まさに協働ロボットの導入は戦略的に取り組むべき重要テーマであると言えるでしょう。