協働ロボットを導入して適切に運用していくためには、協働ロボットを適正に稼働させるためのインフラ設備や環境整備がきちんと行われていなければなりません。
このページでは、協働ロボットのインフラ設備についてまとめましたので、導入前の基礎知識として把握しておきましょう。
協働ロボットなどの産業用ロボットを導入するに当たって、まず遵守しなければならない法律として「労働安全衛生法」があり、それにもとづいて定められている具体的なルールに「労働安全衛生規則」があります。
これは、様々な人が働く製造現場において、産業用ロボットが安全に稼働して労働災害や事故などのリスクを増大しないように法的に定められている規則であり、当然ながら協働ロボットを導入する場合も労働安全衛生規則にもとづいて安全策を講じなければなりません。
一方、そもそも労働安全衛生規則において産業用ロボットに関する規定は昭和58年に策定(追加)されたものであり、当時は「協働ロボット」という概念が存在しておらず、平成25年頃になるとそのままでは協働ロボットの導入にとって障害となることが問題視されていました。
参照元:中央労働災害防止協会安全衛生情報センター公式HP(https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-54/hor1-54-62-1-0.htm)
参照元:【PDF】産業用ロボットの特別規制について(https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202123001B-buntan29.pdf)
上記のような事情を背景として、平成25年6月14日に閣議決定された「規制改革実施計画」やロボット技術の革新といった事情を総合的に考慮し、同年12月に「労働安全衛生規則第150条の4」に関する一部改正の通達が出されました。
これは、そもそも産業用ロボットを導入する場合は作業員の安全を確保するため安全柵などを設置し、人とロボットを隔離するといった対策を義務づけていたルールでしたが、同規則の改正によって、協働ロボットとして一定の安全性を確保できる場合は一部条件が緩和されることとなったというものです。
ただし協働ロボットの安全性を担保するため、導入前にリスクアセスメントを実施し、リスクを回避できていることを評価した上でその結果を記録・保管しておくといった準備が必要です。
参照元:【PDF】別紙:昭和58年6月28日付基発第339号労働省労働基準局長通達(施行通達)(https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-54/hor1-54-62-1-2.pdf)
労働安全衛生規則にもとづいて協働ロボットの安全性を確保するために、協働ロボットが稼働している最中にロボットと作業員が衝突するといった事故を防げるよう、適切な作業スペースや安全な空間を確保しなければなりません。
なお、安全な作業スペースが確保できない場合、労働安全衛生規則の改正条件に適合しないため、そもそも法的に協働ロボットを導入することができなくなります。
根本的な問題として、協働ロボットを設置したいと考えている作業場に十分な設置スペースを用意できない場合、物理的に協働ロボットを導入することは困難となります。
また設置スペースの確保について注意すべきポイントとして、単に協働ロボットが収まるだけの空間を用意するだけでは不十分であるという点も無視できません。
例えばロボットのサイズに対してぎりぎり設置できるというスペースへロボットを導入した場合、実際にロボットをそこへ収めることが可能であったとしても、結果的にロボットの稼働中は人が移動する空間的余裕が失われ、ロボットを使用している最中は作業員の移動や材料の運搬・供給を行えなくなるといった恐れもあります。
こうなると生産性がむしろ低下してしまい、協働ロボットのメリットも全く活かせなくなるでしょう。
協働ロボットを採用する場合、本体やシステムを稼働させるための電源供給ラインを確保しなければなりません。また溶接加工などに対応した協働ロボットであれば、ガスや空気などを送るラインも必要です。
一方、これらの電線やパイプなどを配線・配管する際に、作業員の邪魔になったり、転倒や衝突のリスクを増大させたりしては本末転倒です。
そのため協働ロボットは可能であれば配電設備などに近い場所へ設置したいものの、それが難しければ作業員の作業や通行に支障を来さない方法で配線・配管を設計しなければなりません。
なお、当然ながら使用する電源についても適切な電圧を対応させることが必須です。
協働ロボットを運用するためには、ソフト面に対応するインフラ設備を拡充することも不可欠です。
具体的には協働ロボットに連携するデータ管理システムを構築し、それを運用管理するための機器や空間が必要となります。また、協働ロボットから送られる各種データを別室でチェックしたり、パラメータ設定などを遠隔で調整したりしたい場合、協働ロボットと離れた場所に管理室を設置することになるでしょう。
そのような場合は当然ながら、管理室を稼働させるためのインフラ環境も併せて整えなければなりません。
ハード面やソフト面の環境が整ったとしても、実際に協働ロボットを適正稼働させていくには事前に自社で明確な運用ルールや操作マニュアルなどを作成しておくことが重要です。
なお、運用ルールやマニュアルに関しては労働安全衛生法や労働安全衛生規則といった法的ルールに準拠している必要もあり、自社の都合で勝手にルールを決定できるとは限らない点にも注意が必要です。
そのため適切な運用ルールなどを整備するためには、開発会社やロボットSIerといった専門家にも相談しながら検討していくようにしてください。