性能の低下や事故を防ぐためにも必要な、協働ロボットのメンテナンスについて解説します。
「労働安全衛生法第28条第1項」(※1)にて、協働ロボットは危険防止と労働災害の措置が必要と定められています。
また、「産業用ロボットの使用等の安全基準に関する技術上の指針5定期検査等」(※2)でも、作業前や定期的な検査で異常がないかチェックすることが定められています。
定期点検やメンテナンスを怠ると、安全機能が働かず作業員の怪我や事故につながる可能性が。悲惨な状態で修理に出せば、予想以上に出費がかさむことも考えられます。メンテナンスの流れは各メーカーにより異なります。ここでは、ハンドリング仕様ロボットの日常点検とメンテナンス周期の一例をご紹介します。
日常点検にプラスして、長期間を対象としたメンテナンスも必要です。まず導入後は毎年本体バッテリーを交換。2年目からは年次点検、3年毎に本体グリス交換を行います。
4年毎に制御装置バッテリー交換、5年目は機構部品とタイミングベルトの交換。また5年ごとに艤装ケーブル交換などオーバーホールも行います。11年目になるとメーカー部品供給期限切れになります。以降、部品交換は滞留在庫です。
上記はあくまで一例と考えてください。購入検討時には、メーカー担当者と定期メンテナンスについて確認しましょう。
定期点検にかかる具体的な費用は、各メーカーに確認してください。
必要な費用について某メーカーの一例をご紹介します。「定期点検基本料」「標準交換部品代」「部品交換調整料」が必要です。基本料は点検や調査にかかる労務費、交換する部品の費用、部品交換調整料は、部品交換の際の工賃です。社外依頼では出張費が別途かかる場合もあります。
メンテナンス担当者は、教示と同様に産業用ロボットの修理・メンテナンスの資格取得が必要になります。 ピンポイントで「この部品を変える」「こうすればこう動く」という知識では足りません。仕様と構造全般を把握しないと、いざ問題が生じたとき適切な判断がくだせないからです。
部品交換作業の要領は、部品交換をするための手順と実施のための準備と段取りのことで、部品を取り扱う際の注意点も理解が求められます。また、部品交換や修理が終わっても、正常に動くケースばかりではありません。部品交換と修理後の評価方法も知っておくべき知識です。
機械と設備安全のための知識は重要視しましょう。産業用ロボットは安全機能がついていても、使い方を間違えば労働災害を引き起こします。設備を導入する際や、点検時になにが危険につながるのかの知識を通じて予防しなければなりません。
ロボットにはメインバーツ以外に周辺機器もあります。周辺機器の基本知識も把握が必要です。たとえば空圧機器や各種センサが当てはまります。
協働ロボットの知識や技術を身につけたメンテナンス担当者は助かる人材です。ただ、他にもしなければならない業務や、いたとしても少人数なら担当者が不在時には対応できません。また、修理できたとしても、すぐに別の不具合が生じるなら見落としている問題があるのかもしれません。
代理店や専門業者と契約をしておくのも対策のひとつです。コストはかかりますが、導入したロボットに対し、問題解決や適切な判断ができる専門知識を持っているため安心して任せられます。
メンテナンスを行わず、不具合も見て見ぬふりをしていると、突然動作しなくなる、重大な労働事故につながります。取引先からの信頼が落ちれば、経営に大ダメージを与えかねません。
協働ロボットを末永く使い続けるには、導入時にはメンテナンスや定期点検までサポートできるメーカーや代理店を選ぶのがおすすめです。ワンストップで購入から維持管理まで担当してくれるからです。
次のページでは、様々な特徴や強みをもつ協働ロボットメーカーを一覧で確認できます。サポート面も含めて検討する際にお役立てください。