協働ロボットを活用する上で、適切なポイントへロボットの作業を導くためには、適正な位置補正を行えることが必要不可欠です。このページでは、協働ロボットと位置補正の関係性や位置補正の重要性について解説していますので参考にしてください。
位置補正とは、文字通り協働ロボットが指定したポイントに対して正しくアプローチして作業を行えるよう、位置座標などの条件を適切に補正するための作業です。
例えばどれだけ機能的に優れている協働ロボットを導入しても、目的の位置へロボットアームを導けなければ、十分な作業品質を得ることはできません。
協働ロボットのパフォーマンスをカタログ通りに発揮させるためには、作業環境や作業対象といった条件に対して適切な位置補正を行える耐性が必要不可欠です。
位置補正を適正かつスムーズに行うことで、製造ラインの作業効率を高めて工場全体の生産性を向上できることも重要です。
逆に位置補正がきちんと行えない場合、何度もロボットの作業条件を設定したり機器を調整したりといったタイムロスが発生し、せっかくの協働ロボットの導入メリットが薄れてしまうことも問題となります。また、位置補正が甘いままでは不良品など低品質な製品が量産されてしまい、結果的に損失が拡大することも無視できません。
ビジョンシステムとは、2Dカメラや3Dカメラといった機器や画像解析システムを活用し、画像や映像によって適切な位置を調整する技術です。
協働ロボットの位置補正を行う場合、ロボットへ搭載されている2Dカメラ/3Dカメラを活用したり、任意のポイントをシステムに記憶させて自動的にロボットが正しい位置補正を行えるようプログラムしたりすることになります。
画像や映像によって適切な位置を把握することが困難な場合、各種センサーを活用し、それぞれのセンサーが収集する情報をデータ分析して位置補正を行うことになるでしょう。
協働ロボットの位置補正を行うセンサーには様々な種類があり、例えばロボットアームにかかる力や荷重の大きさといった物理的な変化を数値化するトルクセンサーや、水平方向の摩擦力と垂直方向の圧力を同時に検出できるフォースセンサーなどが挙げられます。
位置補正を効率化するための手段として、人工知能(AI)のディープラーニングといった技術を活用することも有効です。
位置補正は一発で最適な条件を得られないケースも多く、繰り返しの作業によって最適条件を探していくといった過程が必要になることもあります。一方、AIはそれぞれの試行パターンを分析して学習することで、やがて素材や条件に合わせてシステムが効果的な位置補正を自動的に計算できるようになることが強みです。
例えば自動車製造業界において、自動車部品の組み立て工程で適切な位置補正を行えば、協働ロボットによる自動組立を実用化することができます。また電子機器製造業では電子基板の回路パターンに合わせた位置補正を自動化することで、量産だけでなく多品種少量生産にもスムーズに対応しやすくなることがメリットです。
その他にも、食品業界や飲料業界では協働ロボットの適正化が商品の衛生管理や生産効率へ直結することも見逃せません。
労働人口の減少による慢性的な人手不足が深刻化する現代日本において、大企業だけでなく中小企業が将来を見据えた設備投資として協働ロボットを導入するケースも増えています。
また中小企業の生産環境の改善や生産効率の向上を目的とした設備投資には、国や地方自治体の補助金や助成金を活用できる場合もあり、協働ロボットを低コストで導入する具体的な施策として積極的に活用することが重要です。
中小企業における協働ロボットの活用方法としては、例えば効果的な生産ラインの構築や省力化による人手不足の解消、危険な作業の自動化による労働災害リスクの軽減など色々なパターンを想定することができます。
企業が協働ロボットや位置補正システムを導入しようと思っても、具体的にどのようなメーカーや製品を選択すれば良いのか分からないことは少なくありません。そのような場合、システムインテグレーター(SIer)や自動化コンサルタントといった専門家へ相談することもあります。
一方、ロボットSIerや自動化コンサルタントは常に情報アンテナを張っておき、最新のロボット技術や位置補正方法を把握しておくと共に、クライアントのニーズや経営課題を分析して適切な製品とのマッチングをサポートするスキルやノウハウを拡充していくことも重要です。
また導入後のサポートや、ティーチング技術の指導といったアフターフォローについても考えておきます。
協働ロボットの導入は製造工程だけでなく、品質検査や不良品のチェックといった品質管理工程においても幅広いメリットを追求できることが強みです。
ただし、適切な品質管理や不良品チェックにはまさしく適正な位置補正やティーチングが欠かせないため、高精度作業を実現するために協働ロボットの利用法について十分に理解しておくことが肝要です。
協働ロボットや位置補正の技術は日進月歩で発展しており、高精細カメラや高感度センサー、高性能AIといった技術開発はロボットの性能や作業品質へ直結する要素となります。
また、従来の位置補正とは異なるシステムやプロセスを開発することで、全く新しいアプローチを実現して、これまでにない効率性や生産性を獲得できるチャンスもあるでしょう。
例えば医療分野における協働ロボットとして、手術時に執刀医をサポートする手術支援ロボットや、放射線照射ポイントを自動的に追跡するための画像解析システムなども広がっています。しかしこれらの医療機器は人の命に関わるものであり、常に正確な動作が必須条件となっているため、当然ながら位置補正に関しても絶対的に信頼できるものでなければなりません。
また、その他にもサービス業や介護業界など色々な分野で人と協働ロボットが一緒に働く事例が増加しています。
協働ロボットの導入メリットを正しく得るには、安全な運用環境を整えることが企業倫理的にも法的にも必須な条件です。
そのため、協働ロボットを導入する際にはリスクアセスメントを実施して適切な運用マニュアルや作業担当者を配置し、十分な安全対策を継続的に実施していく体制作りが不可欠です。
協働ロボットは生産性向上や効率性の改善に寄与する産業機器ですが、導入時の初期コストが大きくなりやすいことも事実であり、特に中小企業などにとっては悩ましい経営課題にもなっています。
そのため、補助金や助成金を積極的に活用していくことはもちろんとして、専門家にも相談しながら自社にとって最もコストパフォーマンスを高められるようなプランを提案してもらうことが大切です。
協働ロボットの位置補正は実際にロボットを活用する環境や条件に合わせて考えなければなりません。しかし、少量多品種の生産や全く新しい分野で協働ロボットを導入する場合、参考データが少なく速やかに位置補正やティーチングをできない可能性も考えられるでしょう。
そのため、現在はハード面でのロボットや機器開発だけでなく、ソフト面の開発やAIのディープラーニングによる効率化など、技術的課題を解消するための取り組みが多角的に研究されています。